永住申請の審査で「年収」はどう判断されるか
本記事は出入国在留管理庁が公開している公式情報等をもとに、制度や手続きを整理して提供するものです。個別の在留資格審査や許可判断については、必ず出入国在留管理庁または行政書士等の専門家へご確認ください。
永住許可申請における「年収(独立生計要件)」の重要なポイントは以下の通りです。
| 審査項目 | 実務上の目安とポイント |
|---|---|
| 年収の安全ライン | 単身者の場合、実務上の目安として「約300万円以上」が基準とされる傾向にあります。 |
| 扶養家族の加算 | 扶養家族が1名増えるごとに、約70万円〜80万円程度の年収加算が必要となるのが実務上の目安です。 |
| 審査対象となる期間 | 一般の就労資格は「過去5年間」、日本人等の配偶者は「過去3年間」、高度専門職は「過去1年〜3年間」の連続した安定収入が求められます。 |
| 配偶者の年収合算 | 申請する在留資格によって、世帯収入として合算が認められる場合と、本人の年収が厳格に問われる場合があります。 |
1. 制度の基本概要(独立生計要件とは)
入管法において、永住許可の要件の1つに「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)」が定められています。年収以外に永住審査で重視される公的義務の履行状況について解説しています。
これは、「将来において公共の負担(生活保護など)にならず、現在持っている資産や職業のスキルによって、日本で安定した生活を送ることができるか」を審査するものです。永住権申請の条件の一つとして、年収は特に重要な審査項目です。その中心となる指標が「年収」となります。
2. 対象者と審査対象期間
現在の在留資格によって、独立生計要件の適用範囲と、収入を証明すべき「過去の期間」が異なります。
| 現在の在留資格(申請ルート) | 審査対象となる年数 | 独立生計要件の適用 |
|---|---|---|
| 一般の就労資格(技術・人文知識・国際業務など) | 過去5年間 | 原則として申請者本人に厳格に適用されます。 |
| 日本人の配偶者等 / 永住者の配偶者等 | 過去3年間 | 緩和されます(配偶者の収入を含め、世帯として安定していれば可)。 |
| 定住者 | 過去5年間 | 適用されます。 |
| 高度専門職(80点以上) | 過去1年間 | 適用されます。 |
| 高度専門職(70点以上) | 過去3年間 | 適用されます。 |
3. 年収の目安(安全ライン)
出入国在留管理庁から「年収〇〇万円以上であれば許可される」という明確な法的基準額は公表されていません。しかし、実務上の傾向として以下の目安が知られています。扶養家族の人数が年収要件に与える影響について詳しく解説しています。
- 単身者の場合:継続して約300万円以上
- 扶養家族がいる場合:300万円 +(扶養人数 × 約70万円〜80万円)
妻(専業主婦)と子ども1人を扶養している場合
基準300万円 +(2人 × 70万円)= 約440万円
※この金額はあくまで審査上有利に働く目安であり、この金額を下回ったからといって「必ず不許可になる」わけではありませんが、審査が厳しくなる傾向にあります。
4. 配偶者との年収合算について
共働きの場合、夫婦の年収を合算して審査を受けられるかについては、申請ルートによって扱いが異なります。
① 「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」からの申請
世帯単位での合算が認められます。
申請者本人に十分な収入がなくても、日本人(または永住者)である配偶者に十分な収入があり、世帯全体として生活基盤が安定していれば要件を満たします。
② 「一般の就労資格」からの申請
原則として、申請者本人の年収が重視されます。
ただし、配偶者も適法に就労している場合(例:配偶者も就労ビザを持っている、または「家族滞在」ビザで週28時間以内の資格外活動許可を得て働いている等)、その収入は「世帯の安定性を支えるプラス要素」として総合評価に考慮される可能性があります。
5. 審査に必要な証明書類
年収を証明するために、主に以下の書類を提出します。
- 住民税の課税(非課税)証明書および納税証明書(指定された過去の年数分)
※市役所・区役所で発行されます。「総所得金額」と「扶養人数」が記載されたものが必要です。 - 源泉徴収票(直近のもの)
- 在職証明書(現在の勤務先が発行するもの)
- 確定申告書の控え(個人事業主や、複数の収入源がある場合など)
6. 審査の重要ポイント
- 継続性と安定性
「直近1年だけ年収500万円」でも、その前の4年間が年収200万円であれば、安定性がないと判断される可能性があります。指定された期間(5年または3年等)、継続して目安額をクリアしていることが理想です。 - 海外扶養人数の影響
本国にいる親や兄弟を「扶養家族」として申告し、日本の税金を安くしている場合、その人数分だけ「必要な年収の目安額」が跳ね上がります。扶養家族を減らして年収要件を満たす場合の注意点を解説しています。結果として、見かけの年収は高くても、扶養人数が多すぎるために「独立生計要件を満たさない」と判断され、不許可になるケースが頻発しています。
7. 注意点(転職・産休・育休の影響)
- 申請直前や審査中の転職
キャリアアップによる年収増加の転職であれば問題になりにくいですが、異業種への転職や、一時的な無職期間(収入減)が発生した場合、生活の安定性に欠けると判断されるリスクがあります。転職中の永住申請について具体的な対応方法を解説しています。 - 産休・育休中の申請
産休・育休中は一時的に収入が減少、またはゼロになります。復職の目処が立っていることや、配偶者の収入で生活が維持できることを合理的に説明(理由書や復職予定証明書の提出など)できれば、必ずしも不利になるわけではありませんが、事案に応じた慎重な説明が求められます。
8. 違反やリスク
- 虚偽の収入申告
年収を高く見せるために源泉徴収票を偽造するなどの行為は、犯罪(公文書・私文書偽造等)に該当するだけでなく、永住許可が不許可となる決定的な理由になります。また、将来のあらゆる在留資格手続きにおいて極めて深刻な悪影響を及ぼします。 - 違法な労働による収入
「家族滞在」の配偶者が資格外活動許可の上限(週28時間)を超えて働いて得た収入を合算して申告した場合、入管法違反(不法就労)が発覚し、永住不許可のみならず現在の在留資格の取消し対象となる可能性があります。
9. よくある質問(FAQ)
預貯金や不動産などの「資産」も審査の考慮要素にはなりますが、永住審査では「将来にわたって継続的な収入を生み出す能力(=安定した年収)」がより重視されます。多額の貯金があっても、毎年の年収が実務上の目安を大きく下回る場合、審査は厳しくなる傾向があります。
必ずしも申請が不可能になるわけではありません。なぜその年だけ収入が下がったのか(例:病気による一時的な休職、会社の業績悪化による一時的な減給など)、現在は回復しており今後も安定していることを合理的に説明できれば、総合的に判断して許可される可能性があります。
「非課税の交通費(通勤手当)」は、課税証明書の総所得金額には含まれないため、永住審査の年収にはカウントされません。一方、課税対象となる住宅手当や家族手当などは総所得に含まれるため、年収として評価されます。
10. 情報源
- 出入国在留管理庁:「永住許可に関するガイドライン」
- 出入国在留管理庁:「永住許可申請」の必要書類一覧
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