永住申請中に転職・退職した場合の対応
本記事は出入国在留管理庁が公開している公式情報等をもとに、制度や手続きを整理して提供するものです。個別の在留資格審査や許可判断については、必ず出入国在留管理庁または行政書士等の専門家へご確認ください。
- 永住申請中の転職や退職は法律で禁止されていませんが、審査における「収入の安定性(独立生計要件)」に多大な影響を与えます。
- 就労系の在留資格を持つ外国人が転職・退職した場合、入管法に基づき14日以内に「所属機関に関する届出」を行う法的な義務があります。
- 上記の届出とは別に、永住審査部門に対しても新しい就労先に関する追加資料を速やかに提出する必要があります。
- 転職によって収入が大幅に下がる場合や、無職の期間(空白期間)がある場合、不許可のリスクが著しく高まります。
1. 制度の基本概要
永住許可申請の審査には、現在長期間(多くの場合10ヶ月から1年以上)を要します。この長期間の審査中に、キャリアアップや会社都合などで転職・退職をすること自体は、法律上禁止されているわけではありません。
しかし、永住審査は「申請時の状況」だけでなく「審査時点での最新の状況」も含めて総合的に判断されます。そのため、申請後に職業や収入状況に変更があった場合は、速やかに出入国在留管理庁へ事実を報告し、新しい雇用状況を証明する手続きを行わなければなりません。
2. 対象者
現在、永住許可申請を行っており、かつ審査期間中に勤務先を退職した、または別の勤務先へ転職した外国人(主に「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」、「技能」などの就労系在留資格で在留している方)。
3. 永住審査における「独立生計要件」とは
出入国管理及び難民認定法(入管法)が定める永住許可の要件の一つに、「独立の生計を営むことができる資産又は技能を有すること(独立生計要件)」があります。
これは、「将来にわたって日本で安定した生活を送ることができるか(生活保護などを受給する可能性がないか)」を審査するものです。転職や退職は、この「安定性」を揺るがす重大な事象として扱われます。永住申請の年収要件について詳しくは別記事で解説しています。
4. 必要書類(追加提出資料)
転職をした場合、永住審査部門に追加で提出することが推奨される一般的な書類は以下の通りです。
- 理由書: 転職に至った経緯と、転職後の業務内容、今後の生活の安定性を説明する文書
- 新しい勤務先の雇用契約書(労働条件通知書): 業務内容、雇用形態、給与額が明記されたもの
- 新しい勤務先の在職証明書
- 退職証明書または離職票: 前職を適正に退職したことを証明するもの
- 直近の給与明細書(転職後にすでに給与を受け取っている場合)
転職の経緯を説明する理由書の書き方も参考にしてください。
5. 申請や手続きの流れ
転職・退職が発生した場合、以下の「2つの手続き」を並行して行う必要があります。外国籍の方が誤解しやすい部分ですが、一報の手続きだけで完了するわけではありません。
- 入管法上の義務「所属機関に関する届出」:
退職した日から14日以内、および新しい会社に入社した日から14日以内に、出入国在留管理庁へ届出を行う義務があります。インターネット(出入国在留管理庁電子届出システム)、郵送、または窓口で手続きが可能です。 - 永住審査部門への「追加資料の提出」:
上記の届出とは別に、永住申請を審査している担当部署へ、項目4で挙げた「新しい就労状況を証明する書類」を郵送または窓口で追加提出します。
6. 審査ポイント(転職・退職が与える影響)
転職の性質によって、審査に与える影響は大きく異なります。
| 転職の状況 | 審査への影響と傾向 |
|---|---|
| キャリアアップの転職 (同業種、給与アップ、大企業への転職など) | 影響は比較的少ない。ただし、勤続年数がリセットされるため、一時的に安定性が疑われる可能性はあります。 |
| 収入が減少する転職 | マイナス評価の対象。特に、永住許可の目安とされる年収水準(例:約300万円)を下回る場合は不許可リスクが高まります。 |
| 異業種への転職 | 現在の在留資格(ビザ)で許可されている活動範囲(職務内容)と合致しているか、入念に審査されます。 |
| 退職して無職(求職中) | 極めて大きなマイナス評価。独立生計要件を満たさないと判断され、不許可になる可能性が極めて高くなります。 |
7. 注意点
- 「高度専門職」の在留資格を持つ方の注意点:
「高度専門職」は、「現在の指定された勤務先で働くこと」を条件に許可されている在留資格です。そのため、一般的な就労ビザのように「転職してから届出をする」のではなく、「新しい勤務先で働き始める前(退職後すぐ)」に、新しい勤務先に基づく「高度専門職」への在留資格変更許可申請を完了させなければなりません。この手続きを怠ると不法就労となる恐れがあります。 - 契約社員や派遣社員への変更:
正社員から契約社員・派遣社員・アルバイトへ雇用形態が変わる転職は、雇用の安定性が低いとみなされ、永住審査において非常に不利に働きます。
8. 違反やリスク
- 届出義務違反:
退職・転職から14日以内に「所属機関に関する届出」を行わなかった場合、入管法違反となります。最大で20万円以下の罰金対象となるほか、永住審査における「公的義務の適正な履行(国益適合要件)」を満たしていないと判断され、不許可の直接的な原因となります。素行善良要件の観点からも、届出義務は重要な審査対象です。 - 虚偽の申告(隠蔽):
転職や無職になった事実を隠したまま永住許可を得ようとした場合、発覚した時点で虚偽申告として不許可となるだけでなく、その後の各種ビザ更新にも悪影響を及ぼします。
9. よくある質問(FAQ)
会社都合の退職であっても、収入が途絶える事実は独立生計要件において厳しく見られます。直ちに「所属機関等に関する届出(離脱)」を行い、速やかに新しい就職先を見つけ、就職後に前述の追加資料を提出して事情を説明する必要があります。
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永住権申請の全条件については永住権申請の条件 2026年の記事で詳しく解説しています。
試用期間中は「本採用に至らないリスク」があるため、雇用の安定性が確保されていないと判断される場合があります。本採用に切り替わった段階で、速やかにその旨を証明する書類(本採用通知書など)を追加提出することが望ましいです。
配偶者(日本人)の収入で世帯としての生活が十分に成り立っている(世帯年収として独立生計要件を満たしている)のであれば、申請者本人の退職が直ちに不許可に直結するわけではありません。ただし、申請時に本人のパート収入も合算して申告していた場合は、状況が変わった旨の報告が必要です。
10. 情報源
- 出入国在留管理庁ホームページ(所属機関等に関する届出手続き、永住許可に関するガイドライン)
- 出入国管理及び難民認定法(第19条の16「所属機関等に関する届出」、第22条の4「永住許可の要件」)